HAKU 北村 コラム 73「悪事の話」
普段は靴職人、北村です。
僕には小学3年生の娘がいるんですけど、あまり悪いことしないんですよねー。女の子だからでしょうか?
自分が小学生だった頃を思い返すと、娘に比べて悪いことしまくってたなあと大変申し訳ない気持ちになります……
今回はそんな小学校時代の悪事について告白していきたいと思います。
悪事1「給食ポイ」
おそらく小学1年生の頃だろう。上級生と一緒に給食を食べていた記憶がある。まだ学校に慣れていない1年生を6年生の子がサポートしてくれていたのだと思う。机をくっ付け、4~6人くらいの班になって食べていた気がする。
当時の私は好き嫌いが多かった。特にマヨネーズで和えた料理が苦手だったのだ。
ある日の給食でポテトサラダが出た。大人となった今では好きな料理だが、小1の私にとっては絶望のメニューだった。私は無理すぎて泣いた。
そしてあることをひらめいた。
(……こっそり床に捨ててしまおう)
私はすぐ実行に移した。スプーンに一口分のポテトサラダを乗せ、上級生のお姉さんが見ていないうちにそっと床に落とす……成功だ。このまま捨て続ければ、この激マズ料理を食べずに済む。
第2弾をスプーンに乗せ、静かに机の下におろした。お姉さんは他の子のサポートをしていて気付かない。
(今だ!)
私はポテトサラダを落下させようと、スプーンを小さく、勢いよく振った。次の瞬間、
「きゃっ!?」
お姉さんが悲鳴を上げた。
そう……私が捨てたポテトサラダは床ではなく、彼女のスカートめがけて飛んで行ってしまったのだ。
何が起こったのか戸惑っていた彼女だったが、犯人探しをするようなことはしなかった。それどころか給食が嫌で泣いている私を気遣ってくれた。
私は罪悪感で何とも言えない気持ちになった。
……あのときのお姉さん、本当に申し訳ありませんでした。
悪事2「フラッシュ目潰し」
これもおそらく低学年の頃だと思う。
帰りの会、私は机の上にランドセルを置き、その上に突っ伏していた。先生の後ろの黒板を見ると、何やら白いものがゆらゆらと揺れている。
(何だろう?)
よく見ようと上半身をランドセルの上で動かすと、白いものが移動する。
(えっ?!)
慌てて今度は逆方向に動いてみる。するとやはりそれも同じように動くのだ。
「光」である。
窓から差し込む光が私のランドセルの金具に反射し、黒板に像を成していると気付く。
(これは面白いぞ!)
ラジコンのように動く光を手に入れた私は、それを黒板上で動かして遊び始めた。
先生はつまらない話を続けている。
(そうだ! )
私は光を操作し、先生の胴体に重ねた。そして徐々に上に移動させ、顔に持っていったのだ。
(ふふふ……)
こっそりと先生の顔に落書きでもしているかのような気分だった。
今、たしかに先生の顔には白い模様があるのに、このことに先生は気付いていないのだ。
さらに光を動かし、先生の目へ持っていった。すると……
「まぶしっ! こらぁ~きたむらくん!」
私は一瞬何が起こったのか分からなかった。
先生に光は見えていないはずなのに、どういうわけか私の仕業だとバレてしまったのだ。
こっそりと悪事を働いていたことを見透かされ、さらにはそれをみんなの前で指摘されたことがとても恥ずかしく、私は塩をかけられたナメクジのように小さくなってしまった。
反射した光が、反射先からは光って見えることを知るのはまだ先のことである。
……あのときの先生、本当に申し訳ありませんでした。
悪事3「国分のおばちゃん」
小学校の頃、私の家は借家であった。隣には大家さんが住んでいて、私は「国分のおばちゃん」と呼んでいた。国分(こくぶ)は名字である。
国分のおばちゃんの家の前には広場があり、当時の私たちの遊び場だった。石灰石で地面に落書きしたり、サッカー、ドッジボール、ラジコンなど、毎日のように騒がしく遊んだ。
当時は気にもしなかったが、当然あの場所は国分のおばちゃんの私有地であったのだろう。
5月、端午の節句の頃になると、広場には見上げるほど大きな鯉のぼりが掲げられた。もちろん国分のおばちゃん家のものである。
私はその鯉のぼりに向かって、小石を投げつけるという遊びをしていた。なぜそんなことをしていたのかというと、当時、藤子不二雄A先生の『プロゴルファー猿』というアニメが放送されており、主人公である猿の得意技「旗包み(はたつつみ)」に憧れていたからである。
『プロゴルファー猿』旗包み
https://www.shin-ei-animation.jp/2016/saru/shot/index.html
投げた小石が鯉のぼりにシュパッと包まれ、その後落ちてくるさまが楽しく、何度も何度も繰り返し投石した。
すると、それに気付いた国分のおばちゃんが、
「こらぁ! そんなことしたらダメやろー!」
と遠くから叫んできた。
私はいつも仲良くしていた国分のおばちゃんに怒られたことに驚き、恥ずかしくなってしまった。直後、私の口から出た言葉は次のものであった。
「うるせー! 屁を国分ぅー!!!」
【屁をこく】と【国分】を掛けた精一杯のあざけりの言葉である。それを大声で叫びながら走って逃げた。
このことは直ちに親に伝わり、むちゃくちゃ怒られた。ただ「屁を国分」というフレーズに関しては、国分のおばちゃんも少し笑っていてくれたような記憶がある。
……国分のおばちゃん、本当に申し訳ありませんでした。
人は大人になるまでに、たくさんの人に許されているのである!
以上、まだまだ悪事はたくさんある北村がお送りしました。
今後ともどうぞよろしくお願いいたします。