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HAKU 北村 コラム 6「妄想の話」

普段は靴職人、北村です。

僕ね、ド近眼なんですよ。
視力検査なんて一番上の文字でさえ、かなり前進しないと見えないですから。
普段はもちろん眼鏡してますけどね。あ、コンタクトだった時期もあります。
あと歯。定期的に歯医者に行ってるのになぜか虫歯になりますね。金属詰めまくりです。

……とまあこんな風に、現代人って身体の一部を何かしら別の物で代用していますよね。
ちょっと調べてみると、人工心臓なんてものもあるそうですよ。医学の進歩!

義手なんかは近年研究が進んでいて、神経系に直接接続して動かす実験が成功しているそうです。かっこいいですねー!もはやSF映画みたいじゃないですか。

あ、ここから先は僕の妄想の話します。唐突ですが気にしないでください。

未来のお話。

義肢の研究がものすごーく進んで、あらゆる部位が機械で代用できるようになりました。元の身体となんら変わりなく動かせるという「すごい義肢」です。

もちろん皮膚だって本物のように再現できるようになりました。知ってる人はシュワちゃんのターミネーター(T-800)を想像してください。あんな感じです。もはや見た目では義手・義足と判断できません。

治療だけでなく整形についてもだいぶ変わりました。
二重にするとか、脂肪吸引だとか、そんなまどろっこしいことはしませんよ。顔ごと取り替えたり、なんなら身体ごと好みのものに替えてしまえば良いのです。

手術が大変?
いえいえ、未来のテクノロジーではちょっとの痛みもなく行えるので心配ご無用。

現代では整形について否定的な考え方を持つ人も多いでしょう。
しかし、いとも簡単に身体の付け替えができるようになったこの未来では、

「ありのままの容姿を強要されるのは差別である。人は誰でも“好きな容姿”で生きる権利を持っているのだ!」

という考え方が広まり、皆が自分の身体を作り替えることに抵抗を持たなくなりました。

さらには、

「生まれたときの性別を強要されるのは差別である。人は誰でも“好きな性別”で生きる権利を持っているのだ!」

という考え方が広まり、男性が女性の身体を、女性が男性の身体を選択することも珍しくなくなったのです。

この時点ですでに、年齢に合わせた見た目を選ぶ必要性も無くなり、「小学生女子に見えて中身はおっさん」だったり、「ダンディな老紳士の中身がピチピチギャル」だったりすることはざらになりました。

さらにここで革命的な技術が誕生します。

なんと身体だけでなく、性格までもが自由に変えられるようになったのです!
そんな馬鹿な技術があるものかとお思いでしょうか? しかし人の性格というのは元来変わってゆくものです。

例えば一冊の本、好きなアーティストの曲、尊敬できる人との出会い、様々な経験を通して人は性格を変えているはずです。同窓会で「お前変わったなあ」と言われる人も少なくないでしょう?

そういった変化を機械的に起こすだけ、ただそれだけの技術なのです。

当初は反対派が多数でした。しかし、

「元々の性格を強要されるのは差別である。人は誰でも“好きな性格”で生きる権利を持っているのだ!」

という考え方が広まり、人々は「誰からも好かれる性格になりたい」とか「プラス思考になりたい」とか自分の性格を気軽に変更し始めたのでした。

……………
………

タモリ「……さてこんな未来が来たら、私達は一体何を基準に愛し合うのでしょう?」

タモリ「見た目? 性格? そんなすぐに変えられるものが、対象となり得るのでしょうか」

タモリ「そして、現在のあなたが誰かに感じている愛情……」

タモリ「それは、その人の『何』に対してのものですか?」

タモリ「果たしてそれは、未来でも存在しているのでしょうか?」

♪テレテテテン↗、テレテテテン↘
♪テレテレテッテン、テレテテテーン

(『世にも奇妙な物語』のBGM)

〜おわり〜

以上、先日テレビであるタレントさんを見て

〈この人、デビューした頃はこんな顔じゃなかったよなあ……〉

と思ったことから長い妄想をしてしまった北村がお送りしました。

今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

※ちなみに脳や中枢神経を除く全ての器官が機械化されるという未来は、1989年の士郎正宗さんの漫画『攻殻機動隊』で「義体化(ぎたいか)」という造語とともに描かれています。映画『マトリックス』に大きな影響を与えたとされる作品です。今から30年も前にこんな設定を思いつくなんてすごいですね。