HAKU 北村 コラム 5「犬こわいの話」
普段は靴職人、北村です。
唐突ですけど僕ね、犬が嫌いなんですよ。
あ、嫌いは言い過ぎました。反射的に恐怖を感じてしまうってことです。
理由はむちゃくちゃ単純で、子供の頃に噛まれたからです。それも二度も。
【CASE.1】幼稚園のとき。祖父の家で飼っていた犬に。
この犬ね、道端でケガしてたのを当時の僕がかわいそうと拾ったらしいんです。なのに全然懐かなかったんですよ(笑)。あるとき手を差し出したらガブッとやられましてね、もうそれ以降ずっと苦手でした。
【CASE.2】小学四年生のとき。今回するのはその話です。
クラスで一番仲が良かった「佐藤くん」っていう友達がいたんです。足がめちゃくちゃ速くて。ほら、小学生の頃って足が速いと尊敬されるじゃないですか? 当時の僕も「すごいなあ」と思ってました。
ある日、僕と弟と佐藤くんの三人で遊んでたんです。この頃の遊びといえば、もっぱら家でファミコンか、もしくは外で冒険ごっこの二択ですよ。で、このときは後者だったわけです。
冒険ごっこでは武器を装備します。武器はかっこいいですからね。当然です。まあ武器といっても銃(=小石)とか剣(=木の棒)なんですけど。
僕たちは隣家の塀の上を歩き回り、大家さんちの駐車場に石灰石で落書きし、よその庭に侵入したりしました。モンスター(=道端の大きな葉っぱ)に遭遇したときは、もちろん僕の銃で穴だらけにしてやりましたよ。
冒険と言ってもルートは馴染みのあるご近所。けれど、とある家の前を通るときだけ僕は少し緊張していました。なぜならその家では凶暴な犬が飼われており、毎回尋常じゃないくらい激しく吠えてくるからです。玄関にある犬小屋は5cm角ほどの太い木材で作られていて「檻」という表現のほうが似合っているように思えました。
「頑丈な檻に入れられているから大丈夫」。普段はそう思って通り過ぎていました。……が、この日は違いました。前を通った瞬間、その犬が飛びかかってきたのです!
まず狙われたのは先頭を歩いていた僕。「うわああ!!!」。腕と足の二カ所を噛まれて転倒。するとすぐに犬は向きを変え、今度は弟に向かって走り出しました。
〈やばい!弟もやられる!〉
ところがなんと、弟は持っていた木の棒を振り回して犬を牽制し、そのまま逃げ切ることに成功したのです!
弟が無事で良かった……良かったのですが、僕の目はこのとき別の「あるもの」を捉えていました。
犬に立ち向かう弟越しのもっと先……そう、いち早く安全なところまで逃げ、壁に隠れながらこちらを見ていた佐藤くんの姿を!!!
僕は思いました。
〈さとうくんって、やっぱり足速いんだなあ〉……と。
そうです。このコラムは犬のことを書くふりをして、本当は佐藤くんの非情さを訴えさせていただきました。
……以上、根に持つ北村がお送りしました。
今後ともどうぞよろしくお願いいたします。